前置きしたようにUNEPSと小沢氏が提案する「国際平和協力隊」は似て非なるもの、というより、似ているのは名前だけといえます。なぜなら、小沢氏の構想では自衛隊の一部を割譲、もしくは部隊を新設してそれを国連に譲渡するという考え方だからです。この部隊は基本的に軍事部門のみで構成され、UNEPSのように他部門から構成される民軍混成部隊ではありませんし、また軍属に限らない「個人の自由意思による参加」というUNEPSの原則も、「国際平和協力隊」構想には見られない要素です。
■基地提供は憲法違反に当たるか
そのことを前置いたうえで、UNEPSが想定する基地というものがどういうものかを説明いたします。日本国内に基地を持つことも可能ですが、基本的にUNEPSは48時間以内の紛争地派遣を原則とする体制であるため、アフリカや中東など、現在最も頻繁に紛争が行われている地域から最も遠い日本がその基地の候補に挙げられる可能性は低いでしょう。それでも百歩譲って、日本に部隊基地を誘致した場合については、昭和34年の最高裁判決として、このような回答を得ており、国会でもこの法解釈が今日まで活用されています。
昭和34年12月16日(砂川事件上告審)国立国会図書館の調査及び立法考査局調べ
「外国軍隊は憲法9条2項に定める戦力には当たらない」
同 最高裁判所大法廷決定
「同条項(9条2項)がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである」
またUNEPSへの取り組みについて問題となる可能性のある要素についても調査結果を得ています。
■資金提供の問題:武力行使補助は憲法違反に当たるか内閣法制局第一部長の答弁(平成4年12月8日)─125回国会参議院内閣委員会
「憲法9条で禁止している武力の行使というものは、要するに戦闘行為という実力の行使に係る概念である。したがって、単に資金を提供するということは、その観点から武力行使の概念には当たりませんから、憲法9条によって禁止されている武力の行使には該当せず、憲法上問題がない」
■日本国民個人の自由意思による外国軍隊への参加
大橋武夫法務総裁の答弁(昭和26年10月29日)─12回国会参議院平和条約及び日米安全保障条約特別委員会
「憲法におきましては我が国民が義勇兵といたしまして外国軍隊に応募することについて、それが国民の個人の自由意思に基づきまして行われまする場合には、これは何ら憲法上の問題も生ずる余地はない。こう考えております」
つまり、可能性は限りなく低いですが、日本にUNEPS部隊基地を作るとしても、それは合憲の範囲で可能です。また日本は既に、朝鮮戦争時1954年に締結された国連軍地位協定に基づいて、在日米軍基地の利用を各国の軍隊に提供している実績がありますので、基地を提供することそのものは法的に可能な立場にあります。そういう意味でも、そもそもUNEPSが最も積極的に推進されているアメリカ本国で連邦議会によりUNEPSの創設が承認されれば、あるいは在日米軍基地にその司令部ができるという可能性はあります。これは、自衛隊にはなんら関係のないことです。
しかしUNEPSは緊急展開部隊ですから、安全に戻れる移動式の基地が必要になります。これら移動式の基地を紛争地域に駐留させることで、国際人道上重大な罪が犯される前に、文民を保護することを主目的としてUNEPSは即時派遣されるわけです。
そして、補給などを行うための航空部隊は、そもそも国際混成部隊なのですから共同作戦が前提となっています。しかも指揮権は勿論、UNEPSすなわち国連が持つのですから、各国が提供するリソースの統合運用は国連が行います。このときに各国が各国の出せるリソースを提供すればいいので、紛争地から遠い日本からわざわざ航空部隊を派遣する必要はなくなります。紛争地から程近い、可能な国が提供すればいいだけの話なのです。
■結論:UNEPSは日本の国益に合致している
このように、日本はUNEPS構想に間違いなく合憲の範囲で参加でき、またUNEPSを推進することにより、コストおよび人員派遣の負担を軽減することができます。これはアメリカでも使われているロジックで、コスト削減が国益に合致するということが賛同議員らの主な支持理由だったりします。これまでの統計を見てのとおり、既存の国連PKOに対しアメリカはコスト的には多大な貢献を行っていても、人的には他の先進国よりも貢献していません(但し、あくまで制服要員=軍人派遣において)。つまり、ヒトを出していません。そのアメリカにとって、国連の負担金の削減は最も魅力的ある提案のはずです。
日本にとっても、これから年金などの財源確保に当たらなければいけないのに、アメリカに次いでカネだけ他よりも多く出している場合ではないはずです。カネもヒトも出せば、コストは倍かかります。カネもヒトも少なくて済めば、コストの問題はなくなります。それでも、人的に貢献していないと批判されることはなくなるでしょう。なぜなら、UNEPSの創設により各国も総じてPKO負担を減らすことが可能になり、そもそも年間3,000人規模しか派遣してこなかった先進国はこれをさらに総体的に減らすことになるからです。日本だけ、PKOがやっと本来任務化したからといって、他の国以上にヒトを送る必要はありません。ヒトは、必要がなければ送る必要ないのです。当然ですよね。
このように、UNEPSに参加すること、その創設に積極的に取組むことは、現在の人的・経済的コストがかかりすぎる集団安全保障体制を強化することに貢献することになります。これに日本が率先して取り組むことで、日本はこの新しい試みのオーナーシップを得ることができます。平和立国日本として、これ以上の誉れはないでしょう。世界最先端の平和構築の取り組みのリーダーになれるのですから!
文責:
参議院議員・犬塚直史事務所
UNEPS PR担当 勝見貴弘
参議院議員・犬塚直史事務所
UNEPS PR担当 勝見貴弘
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